2019.01.28
体が思うように動かなくなってきた、疲れやすくなってきたなどという症状を感じる方は少なくないと思います。
それらの原因が、筋肉や関節によるものではないかと考える方が多いのではないでしょうか。
しかし、原因のひとつに骨粗鬆症があり、それによる痛みや動きにくさを感じる方もいらっしゃいます。
骨粗鬆症は自覚症状がない場合が多いため、つい見逃されるものでもあります。
今回は骨粗鬆症についてまとめましたので是非ご覧ください。
○ 骨粗鬆症とはどんな病気か
骨の強度が低下して、骨折しやすくなる骨の病気を「骨粗鬆症」といいます。
骨粗鬆症により骨がもろくなると、つまずいて手や肘をついた、尻もちをついた、くしゃみをした、などのわずかな衝撃で骨折が起きることがあります。
直接的に生命をおびやかす病気ではありませんが、骨粗鬆症による骨折から、介護が必要になってしまう人も少なくありません。
骨粗鬆症は痛みなどの自覚症状がないことが多く、定期的に骨密度検査を受けるなど、日ごろからのチェックが必要です。
〇 どんな症状があらわれるか
骨粗鬆症の症状として、身長が以前より小さくなった、背中が丸まってきた、腰や背中に痛みがある、などがあります。
痛みがない場合も多いため、身長が小さくなってきたり、背中が丸まってきたりしたら要注意です。
つい、「年だから仕方がない」とそのままにしがちですが、骨粗鬆症が原因で骨がつぶれて身長が縮む場合が多いです。
◯ 骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症の原因には以下のものが挙げられます。
● 骨密度の低下
女性ホルモンの低下、加齢、また突発的に起こるもの(妊娠後骨粗鬆症)などがあります。
骨粗鬆症は女性に多く、全体の約80%を占めるともいわれています。
● 喫煙や過度な飲酒の習慣
喫煙や過度な飲酒の習慣がある人は骨粗鬆症のリスクが高まります。
● ダイエットも含めた栄養不足
栄養不足は、骨粗鬆症の原因になります。
とくに成長期は丈夫な骨をつくり、骨にカルシウムを貯蓄する大事な時期であるため、極端なダイエットをすると、将来の骨密度に悪影響を及ぼします。
● 運動不足
運動量が足りないと、骨が弱る原因となります。
● 特定の病気や、服用している薬
代表的な病気は、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、関節リウマチのほか、糖尿病をはじめとする生活習慣病で頻度が高いとされています。
骨粗鬆症は原因により、原発性と続発性に分けられます。下の図よりご確認ください。
◯ 検査と診断
問診
まずは医師による聞き取り(問診)があります。
現在気になっている症状に関すること以外にも、閉経時期や病歴、食事や運動、生活習慣に関することなど様々あり、これらは診断する上で大切な手がかりとなります。
骨密度検査
「骨密度」は、骨の強さを判定するための代表的な指標です。
骨密度検査では、骨の中にカルシウムなどのミネラルがどの程度あるかを測定します。
骨密度は若い人の骨密度の平均値と比べて自分の骨密度が何%であるかで表されます。
骨密度検査は、骨の健康を知る上で重要な手がかりです。
特に女性は症状が無くても、40歳以上になったら定期的に骨密度を測定することをおすすめします。
レントゲン検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形の有無、骨がどのくらい濃く写っているかを確認します。骨粗鬆症と他の病気とを区別するためにも必要な検査です。
身長測定
25歳のときの身長と比べどのくらい縮んでいるかは、骨粗鬆症を診断するうえでの指標になります。
血液・尿検査
骨代謝マーカーという検査により、骨の新陳代謝の速度を確認します。
骨代謝マーカーは血液検査、尿検査によって測定されます。
骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人は骨密度の低下速度が速いことから、骨密度の値にかかわらず骨折の危険性が高くなっています。
この検査も、骨粗鬆症を他の病気と区別するためにも行われます。
◯ 骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症の治療の目的は、骨密度の低下を抑え、骨折を防ぐことです。
治療の中心は薬物治療になりますが、骨粗鬆症の発病には、食事や運動などの長年の習慣も深く関わっています。
そのため、薬物治療とともに食事療法や運動療法も並行して行い、骨強度を高めていくことが重要です。
骨粗しょう症の薬は大きく3つに分類されます。
(1) 骨吸収を抑制する薬
骨は古くなり劣化すると、新しい骨へと生まれ変わっています。 これは骨の新陳代謝であり、「骨のリモデリング」ともいいます。
健康な骨では、骨吸収(骨を壊す働き)と骨形成(骨をつくる働き)のバランスがつり合っています。 しかし、骨粗鬆症の骨では、骨吸収がどんどん進み骨形成を上回り、骨がスカスカしてもろくなります。
骨吸収がゆるやかになると、骨形成とのバランスがとれ、骨密度の高い骨が出来上がります。
女性ホルモン製剤(エストロゲン)、ビスフォスフォネート製剤、SERM(塩酸ラロキシフェン、バゼドキシフェン酢酸塩)、カルシトニン製剤、デノスマブ
(2) 骨の形成を促進する薬
活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、テリパラチド(副甲状腺ホルモン)
(3) その他
カルシウム製剤
骨粗鬆症と診断され、せっかく薬物治療をはじめても、1年後には患者さんの約5割が処方通りの服薬ができていないという報告があります。
多くの場合、骨粗鬆症の薬物治療は、1年・2年〜といった息の長い治療で効果があらわれます。
痛みが消えた、なかなか骨密度が上がらないからと、自己判断で薬を中断しないようにしましょう。
薬が飲みづらかったり、服薬が難しかったりする場合は医師に相談するようにしましょう。
◯ 食事と運動
骨密度を低下させないような食事をすることが大事です。
カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成に役立つ栄養素を積極的に摂りましょう。
カルシウムとビタミンDを同時に摂ることで、腸管でのカルシウム吸収率がよくなります。
また、高齢になると、食の好みが変わったり、小食になったりしてタンパク質の摂取量は不足する傾向があります。
タンパク質の摂取量が少ないと骨密度低下を助長しますので、意識して摂取しましょう。
栄養やカロリーのバランスがよい食事を規則的に摂るのが、食事療法の基本です。
骨は、負荷がかかるほど骨をつくる細胞が活発になり、強くなる性質があります。 散歩を日課にしたり、階段の上り下りを取り入れたりするなど、日常生活のなかでできるだけ運動量を増やしましょう。
骨折予防に有効な運動は、ウォーキング、ジョギング、エアロビクスなどがありますが、ご自身の体の状態にあわせて無理なく続けることが大切です。骨粗鬆症治療中の方やお身体に痛みがある方は、運動を開始する前に医師に相談してください。
症状が無くても、女性は40歳を過ぎたら定期的に骨密度検診を受けることがすすめられています。
わが国では、40歳以降の女性を対象に5年刻みに骨密度の節目検診が行う自治体が多くなっています。 特に閉経後の女性は、可能であれば1年に1度検診を受けるとよいとされています。 骨密度検診は、お住まいの地域の広報誌やホームページ、保健センターに問い合わせするなどして確認できます。
検診で骨密度が減っていると判定された人は、指示された時期に医療機関で診断を受け、治療の時期を逃さないようにしましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
骨粗鬆症についてなにかご不明な点や、ご相談があれば気軽に当院までお問い合わせください。